3歳が噛むのはなぜ?発達に問題はある?保育士19年が解説

3歳になると噛みつきは少しずつ減ってくる時期ですが、それでも噛んでしまうことは珍しくありません。
保育士19年の経験をもとに、3歳が噛む理由や発達との関係、家庭でできる対応をお伝えします。

この記事でわかること

  • 3歳でも噛みつきがある理由
  • 発達に問題があるのかどうか
  • 保育園で実際にあった噛みつきの経験
  • 家庭でできる対応

3歳でも噛みつきは珍しいことではありません

3歳になると、2歳頃に比べて噛みつきは少しずつ減ってくる時期です。

しかし、「3歳なのに噛むの?」と心配される保護者の方も多いですが、保育現場では3歳でも噛みつきが見られることは決して珍しくありません。

私自身も保育士として19年間働く中で、3歳児の噛みつきを何度も経験してきました。

実は、私自身にも噛まれた経験があります。

小学生の頃、隣の席の男の子に何度か腕を噛まれたことがありました。
記憶はうっすらですが、その子の保護者が家まで謝りに来てくださったことを今でも覚えています。

もちろん、小学生の噛みつきと3歳の噛みつきでは理由は異なります。

ただ、「噛む=発達に問題がある」とすぐに考える必要はありません。
年齢によって理由は変わりますが、3歳でも噛みつきが見られることは十分にあります。

3歳は言葉の発達にも大きな個人差があります

3歳になると会話が上手になる子もいますが、発達には大きな個人差があります。

文章で話せる子もいれば、一語文や二語文が中心のお子さんもいます。

言葉で気持ちを伝える力に差があるため、「嫌だった」「貸して」「やめて」がうまく伝えられず、噛みつきにつながることがあります。

また、この時期はまだ他者の気持ちを十分に理解する力が育っている途中です。

心理学では「他者視点」と呼ばれますが、相手にも自分とは違う気持ちがあることを少しずつ学んでいく時期です。

そのため、自分の思いが強くなりすぎると、「相手は痛い」「悲しい」という気持ちまで考えられず、思わず噛んでしまうことがあります。

発達の特徴を理解すると、「どうして噛むの?」ではなく、「まだその力を育てている途中なんだな」と見方が変わります。

もちろん、噛みつきをそのままにしてよいという意味ではありません。

大切なのは叱ることではなく、「どうしたかったの?」「貸してって言いたかったのかな?」と気持ちを言葉にしてあげながら、少しずつ相手の気持ちにも気付けるよう関わっていくことです。

3歳が噛む5つの理由

① 自分の気持ちをうまく伝えられない

3歳になると話せる言葉は増えてきますが、怒りや悔しさなど強い感情になると、言葉よりも先に行動が出てしまうことがあります。

「貸してほしかった」「嫌だった」「やめてほしかった」という気持ちをうまく表現できず、噛みついてしまうことがあります。

② お友達とのトラブルが増える

3歳になると友達との関わりがぐっと増えます。

一緒に遊ぶ楽しさを感じる一方で、おもちゃの取り合いや順番、ルールのある遊びなど、トラブルも増えてきます。

その中で悔しさや怒りが大きくなり、思わず噛んでしまうことがあります。

③ 他者の気持ちをまだ十分に理解できない

3歳は相手の気持ちを考える力が育ち始める時期ですが、まだ発達の途中です。

「噛んだら痛い」ということは少しずつ理解していても、その瞬間は自分の気持ちが優先されてしまいます。

そのため、悪気がなくても噛みついてしまうことがあります。

④ 感情をコントロールする力が未熟

嬉しい、悔しい、悲しいなどの感情を自分で整理する力は、まだ十分ではありません。

眠い、お腹が空いた、疲れたといった体調も重なると、普段より気持ちをコントロールしにくくなり、噛みつきにつながることがあります。

⑤ 環境の変化やストレス

進級や新しいクラス、弟や妹の誕生、家庭環境の変化など、大人が思っている以上に子どもは環境の変化を敏感に感じています。

言葉では表現できない不安やストレスが、噛みつきという行動になって表れることもあります。

保育園で実際によくあった3歳児の噛みつき

私は保育士として3歳児クラスの担任を経験したことがあります。

その中でも、今でも忘れられない噛みつきの出来事があります。

普段からとても仲の良い2人の男の子でした。
その日もいつも通り仲良く遊んでいました。

しかし、おもちゃの取り合いになり、私が仲立ちに入ろうとした、そのほんの一瞬でした。

先に相手の子が手を出し、それに怒ったA君が、とっさにB君の顔へ噛みついてしまったのです。

B君の顔にはくっきりと歯型が残り、あざのような噛み跡になってしまいました。

二人とも「やられた」という思いがあり、大泣きになりました。

私はすぐにけがの確認を行い、園長へ報告し、保護者へ状況を丁寧に説明しました。

ところが、この出来事は簡単には終わりませんでした。

実はB君のご家庭では、その週に祖父母と一緒に七五三の前撮りを予定していたのです。

顔に噛み跡が残ってしまったことで、ご家族は大変ショックを受けられていました。

私は、防ぐことができなかったことについて心から謝罪しました。

しかし、ご家族のお気持ちはそれだけでは収まりませんでした。

「園からだけではなく、相手の保護者からも謝罪してほしい。」

そのようなお話もあり、園として何度も話し合いを重ねました。

一方で、先に手を出してしまった経緯もあり、どちらか一方だけが悪いとは言い切れない状況でした。

子ども同士のトラブルは、本当に数秒で起こります。

だからこそ保育士は、安全を守るだけではなく、それぞれの子どもの気持ちや保護者の思いにも寄り添いながら対応していかなければなりません。

3歳になると「自分を守るための言葉」も出てきます

3歳頃になると、自分を守ろうとして、その場の出来事を自分なりに説明する姿も見られるようになります。

時には実際とは違うことを話すこともありますが、大人をだまそうとしているわけではありません。

「怒られたくない」「自分は悪くないと思ってほしい」という自然な気持ちから話していることが多いのです。

まだ出来事を順番に整理して説明することは難しい年齢です。

そのため保育士は、一人の話だけで判断するのではなく、その場の状況や周囲の子どもの様子も含めて丁寧に確認しながら対応しています。

3歳は心も言葉も大きく成長する時期です。
だからこそ、「噛んだ」という結果だけを見るのではなく、その背景にある気持ちや発達を理解することが何より大切だと、私は19年間の保育を通して感じています。

家庭でできる対応

3歳になると、「もう話せるから分かるはず」と思われることがあります。

しかし、話せることと、自分の気持ちをうまくコントロールできることは別です。

保育士として19年間子どもたちと関わってきましたが、3歳はまだ感情が先に動いてしまう時期です。
悔しい、悲しい、腹が立ったという気持ちが大きくなると、言葉より先に手や口が出てしまうことがあります。

そのため、噛んでしまった時に長く叱るよりも、まずは子どもの気持ちを受け止めることが大切です。

例えば、

  • 「貸してほしかったんだね。」
  • 「嫌だったんだね。」
  • 「悔しかったね。」

このように、子どもの気持ちを言葉にしてあげましょう。

そのうえで、

  • 「でも噛むと痛いよ。」
  • 「貸してって言ってみようね。」
  • 「先生やお母さんに教えてね。」

と、次はどうしたらよかったのかを短く伝えることが大切です。

また、言葉で伝えられた時には、

「ちゃんと伝えられたね。」

「教えてくれてありがとう。」

と認めてあげることで、「言葉で伝える方がうまくいく」という経験を積み重ねることができます。

私は保育士として、「噛まなかった日」を褒めるのではなく、「言葉で伝えられた瞬間」をたくさん認めるようにしてきました。

子どもは認められた経験を積み重ねることで、自分の気持ちを少しずつ言葉で表現できるようになっていきます。

焦ってすぐに直そうとするのではなく、一つひとつの成長を見守ることが、結果として噛みつきを減らしていく近道だと感じています。

発達障害との違いは?

「3歳になっても噛みつきがあるけれど、発達障害なのでは…」と不安になる保護者の方も少なくありません。

しかし、噛みつきだけで発達障害と判断することはできません。

3歳は、まだ言葉や感情のコントロール、相手の気持ちを理解する力が発達の途中です。
そのため、友達とのトラブルや悔しい気持ちから噛んでしまうことは珍しいことではありません。

保育士として19年間、多くの子どもたちと関わってきましたが、年齢とともに言葉で気持ちを伝えられるようになり、自然と噛みつきが減っていく子どもたちをたくさん見てきました。

一方で、噛みつきだけではなく、

  • 言葉の発達が極端にゆっくりである
  • 名前を呼んでも反応が少ないことが多い
  • 集団生活での困りごとがたくさんある
  • 強いこだわりがあり生活に支障が出ている
  • 噛みつき以外にも気になる行動が続いている

このような様子が重なっている場合には、一度専門機関へ相談してみることも大切です。

大切なのは、「噛む=発達障害」と決めつけないことです。

子ども一人ひとり発達のスピードは違います。
気になることがあれば、一人で抱え込まず、保育園や幼稚園の先生、市町村の子育て相談窓口、小児科などへ相談してみましょう。

早めに相談することは決して悪いことではありません。
「何も問題なかった」と安心できることもありますし、お子さんに合った関わり方が見つかるきっかけにもなります。

専門家へ相談する目安

3歳の噛みつきは発達の途中で見られることも多く、すぐに心配し過ぎる必要はありません。

しかし、次のような様子が続く場合は、一度専門家へ相談してみると安心です。

  • 毎日のように強く噛みつき、けがにつながることが多い
  • 家庭でも保育園でも頻繁に噛みつきが続いている
  • 自分自身を何度も噛んでしまう
  • 言葉の発達や友達との関わりなど、噛みつき以外にも気になることがある
  • 保護者だけでは対応が難しいと感じている

相談先は、保育園や幼稚園の先生、市町村の子育て相談窓口、小児科、発達相談などがあります。

保育士として働いていた頃、「もっと早く相談すればよかったです」と話される保護者の方もいれば、「相談して安心しました」と笑顔になられる保護者の方も多くいらっしゃいました。

相談することは、「発達障害かもしれない」と決めつけることではありません。

お子さんに合った関わり方を一緒に考えるための大切な機会です。
一人で抱え込まず、周りの力を借りながら、お子さんの成長を見守っていきましょう。

よくある質問(Q&A)

Q. 3歳でも噛みつくことはありますか?

はい。2歳頃よりは少しずつ減ってきますが、3歳でも噛みつきは決して珍しいことではありません。
友達との関わりが増えることで、おもちゃの取り合いや順番待ちなどのトラブルから噛んでしまうことがあります。

Q. 3歳になっても噛むのは発達障害ですか?

噛みつきだけで発達障害とは判断できません。
3歳は言葉や感情をコントロールする力がまだ発達の途中です。
気になることが噛みつき以外にもある場合は、一人で悩まず専門機関へ相談してみましょう。

Q. 保育園から何度も「噛みました」と言われます。どうすればいいですか?

まずは保育園と一緒に、お子さんがどんな場面で噛んでしまうのかを確認しましょう。
眠い時なのか、おもちゃの取り合いなのか、特定の場面が分かることで対応しやすくなります。
家庭と保育園が情報を共有することが大切です。

Q. 家では噛まないのに、保育園だけ噛みます。

保育園では集団生活の中で、お友達との関わりが増えます。
家庭では経験しないようなトラブルや我慢する場面も多いため、保育園だけで噛みつきが見られることも珍しくありません。

Q. 噛んでしまった時は厳しく叱るべきですか?

強く叱ることよりも、「嫌だったんだね」「悔しかったね」と気持ちを受け止めた上で、「噛むと痛いよ」「貸してって言ってみようね」と短く伝えることが大切です。
噛まなかった時や言葉で伝えられた時には、たくさん認めてあげましょう。

まとめ

  • 3歳でも噛みつきは決して珍しいことではない
  • 友達との関わりが増えることで、トラブルから噛みつくことがある
  • 言葉や他者の気持ちを理解する力には大きな個人差がある
  • 噛みつきだけで発達障害とは判断できない
  • 叱ることよりも、気持ちを受け止めて言葉で伝える経験を積み重ねることが大切

3歳は、心も言葉も大きく成長する時期です。
その一方で、自分の気持ちをうまく表現できず、噛みつきという行動になってしまうこともあります。

保育士として19年間、多くの子どもたちと関わってきましたが、「3歳だからもう噛まないはず」と言い切れるものではありません。
友達との関わりが増えるからこそ起こるトラブルもあり、一人ひとり発達のスピードも違います。

私自身も、噛みつきによって保護者対応が難しくなった経験や、「もっと防げなかっただろうか」と悩んだ経験を何度もしてきました。
だからこそ、「噛んだ」という結果だけを見るのではなく、その子がどんな気持ちだったのか、その背景を考えることの大切さを強く感じています。

焦って叱るのではなく、「どうしたかったのかな?」と気持ちに寄り添いながら、言葉で伝えられた時にはしっかり認めてあげましょう。
その積み重ねが、子どもの成長につながっていきます。

参考資料

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