1歳の噛みつきはよくあること

保育士として19年間働いてきましたが、1歳児の噛みつきは決して珍しいことではありません。

特に、1歳児クラスから初めて保育園へ入園するお子さんに多く見られる印象があります。

その理由の一つが、家庭でのコミュニケーションです。

赤ちゃんの頃は、お父さんやお母さんとじゃれ合いながら軽く噛んで遊ぶことがあります。
家庭では笑って済んでいたことでも、子どもにとっては「楽しいコミュニケーション」の一つとして覚えていることがあります。

そのまま保育園でも同じように友達へ噛みついてしまい、初めて大人から「噛んではダメだよ」と伝えられる子も少なくありません。

今まで注意された経験がほとんどない子にとっては、「どうしてダメなの?」と戸惑うこともあります。

いつもニコニコ笑っている大好きな先生が、真剣な表情で、

「ダメだよ。」

「お友達、痛かったね。」

そう伝える姿を見て、驚いて泣いてしまう子もいました。

もちろん、その子は悪気があって噛んでいるわけではありません。
「お友達は痛い」ということや、「保育園では噛んではいけない」というルールを、これから少しずつ学んでいく時期なのです。

1歳が噛む理由はさまざまです

1歳の噛みつきには、「これが原因」と一つに決められるものではありません。

私が19年間保育をしてきた中でも、一人ひとり理由は違いました。

先ほどお伝えしたように、家庭で噛むことがコミュニケーションの一つになっていて、その延長でお友達にも噛んでしまう子もいます。

また、歯が生え始めて歯ぐきがむずがゆく、何でも口に入れたり噛んだりしたい時期のお子さんもいます。

さらに、まだ言葉で気持ちを伝えることが難しく、「貸してほしい」「嫌だった」「やめてほしい」という思いを噛むことで表現してしまう子も少なくありません。

興奮した時や嬉しい気持ちが大きくなり過ぎて、思わず噛んでしまう子もいました。

このように、1歳の噛みつきにはさまざまな理由があります。
だからこそ、「噛んだから悪い子」と決めつけるのではなく、「なぜ噛んでしまったのだろう」と背景を考えることが大切だと感じています。

1歳が噛む5つの理由

① 家庭でのコミュニケーションの延長

1歳児クラスで特に多いと感じるのが、家庭でのコミュニケーションの延長で噛んでしまうケースです。

赤ちゃんの頃、お父さんやお母さんとじゃれ合いながら軽く噛んで遊ぶことがあります。
家庭では笑って済んでいたことでも、子どもは「楽しい遊び」として覚えていることがあります。

そのため、保育園でも同じようにお友達へ噛んでしまい、初めて「噛むと痛いよ」「お友達は悲しいよ」と伝えられる子も少なくありません。

② 歯が生え始めて歯ぐきがむずがゆい

1歳頃は乳歯が生えそろう時期でもあります。
歯ぐきがむずがゆく、何でも口に入れたり噛んだりして感覚を確かめようとする子もいます。

この場合は、おもちゃや歯固めなど、安全に噛めるものを用意してあげることも一つの方法です。

③ 言葉で気持ちを伝えられない

1歳は、まだ言葉が十分に育っていない時期です。

「貸してほしい」「嫌だった」「やめてほしい」という気持ちがあっても、言葉で伝えることができず、噛むことで表現してしまうことがあります。

④ 興奮してしまう

嬉しい時や楽しい時、興奮し過ぎて思わず噛んでしまう子もいます。

悪気があるわけではなく、気持ちをうまくコントロールできないことが原因です。

⑤ 自分の気持ちをコントロールできない

1歳は心も体も大きく成長する時期ですが、感情をコントロールする力はまだ発達の途中です。

眠い、お腹が空いた、疲れたなど、小さなきっかけでも気持ちがあふれ、噛みつきにつながることがあります。

このように、1歳の噛みつきにはさまざまな理由があります。
だからこそ、「噛んだから悪い子」と決めつけるのではなく、その背景にある気持ちを理解することが大切です。

保育園で実際によくある噛みつきの場面

保育士として19年間働いてきましたが、噛みつきは一日の中でも起こりやすい時間帯があります。

もちろん絶対ではありませんが、「この時間は気をつけよう」と職員同士で声を掛け合う場面もたくさんありました。

① 週明けの月曜日

土日に家族とお出掛けをしたり、夜更かしをしたりして生活リズムが崩れていると、月曜日は眠さや疲れが残っているお子さんも少なくありません。

まだ自分の体調を言葉で伝えられない1歳児は、イライラした気持ちを噛みつきという行動で表現してしまうことがあります。

② お昼寝前の忙しい時間

保育園では、お昼寝前が一日の中でも特に忙しい時間です。

  • 食事介助
  • 片付け
  • トイレやおむつ交換
  • 着替え
  • パジャマへの着替え
  • 布団を敷く準備

保育士は子どもたちの安全を見守りながら、さまざまな援助を同時に行っています。

そのため、一瞬目を離した隙に、おもちゃの取り合いや場所の取り合いから噛みつきが起きてしまうこともあります。

③ 夕方の合同保育

夕方になると、お迎えの時間に合わせて複数のクラスが一緒に過ごす「合同保育」になる園も多くあります。

普段あまり関わらない年上や年下のお友達と遊ぶことで、新しいトラブルが起きることもあります。

また、子どもたちも一日の疲れがたまっている時間帯です。
眠さや空腹、お迎えを待つ不安などが重なり、普段は噛まない子でも思わず噛んでしまうことがあります。

だからこそ保育士は、「噛む子」を見るのではなく、子どもたち全体の様子や、その日の体調、生活リズムまで考えながら保育をしています。

家庭でできる対応

保育士として働いていた中で、家庭へ噛みつきについてお伝えするタイミングは、とても難しいと感じていました。

家庭環境は一人ひとり違います。
共働きのご家庭、母子家庭、兄弟姉妹の年齢や家庭での生活リズムなど、それぞれ事情があります。

そのため、一度噛んだからといって、すぐに「家庭で気を付けてください」とお伝えすることは、私の経験ではあまりありませんでした。

一方で、家庭での関わり方が噛みつきにつながっている場合もあります。

例えば、赤ちゃんの頃から親子のスキンシップとして軽く噛んで遊んでいたり、「甘噛み」を笑いながら受け入れていたりすると、子どもはそれをコミュニケーションの一つとして覚えてしまうことがあります。

家庭では楽しい遊びでも、保育園ではお友達が痛い思いをしてしまいます。
そのため、このような様子が見られた時には、ご家庭にも丁寧にお伝えし、一緒に考えていくことが大切だと感じています。

もちろん、保護者の受け止め方はさまざまです。
「教えてくれてありがとうございます」と言ってくださる方もいれば、「家ではそんなことありません」と驚かれる方もいます。

だからこそ、保育園と家庭がお互いを責めるのではなく、「子どもが安心して気持ちを伝えられるようになるにはどうしたらいいか」を一緒に考えていくことが、何より大切だと思います。

ご家庭では、噛んでしまった時に長く叱るよりも、
「噛むと痛いよ」
「嫌だったんだね」
「貸してって言おうね」
と短く伝えながら、気持ちを代弁してあげることが大切です。

そして、言葉で伝えられた時には、
「貸してって言えたね」
「教えてくれてありがとう」
とたくさん認めてあげましょう。
その積み重ねが、噛む以外の伝え方につながっていきます。

いつまで続く?

「このままずっと噛み続けるのでは…」と心配される保護者の方も多いですが、多くのお子さんは成長とともに少しずつ落ち着いていきます。

1歳から2歳頃は、まだ言葉で自分の気持ちを十分に伝えることが難しいため、噛むことで気持ちを表現してしまうことがあります。

しかし、言葉が増え、「貸して」「嫌だ」「やめて」など、自分の思いを言葉で伝えられるようになるにつれて、噛みつきは自然と減っていくことがほとんどです。

保育士として19年間、多くの子どもたちを見てきましたが、「ずっと噛み続ける子」はほとんどいませんでした。

もちろん個人差はありますが、子どもの成長を信じながら、言葉で伝えられた時にはしっかり認めてあげることが大切です。

焦らず、一つひとつの成長を見守っていきましょう。

専門家へ相談する目安

1歳の噛みつきは発達の過程でよく見られるため、過度に心配する必要はありません。

しかし、次のような場合は一度専門家へ相談してみると安心です。

  • 何度も強く噛み、けがにつながることが多い
  • 自分自身を頻繁に噛んでしまう
  • 言葉以外にも発達で気になることがある
  • 家庭でも保育園でも頻繁に噛みつきが続いている
  • 保護者だけでは対応が難しいと感じている

気になる場合は、保育園や市町村の子育て相談窓口、小児科などへ相談してみましょう。
一人で悩まず、周りの力を借りることも大切です。

よくある質問(Q&A)

Q. 保育園から「噛みました」と言われました。親としてどうすればいいですか?

まずは保育園と一緒にお子さんの様子を見守りましょう。
1歳はまだ言葉で気持ちを伝えることが難しい時期です。
家庭では叱ることよりも、「噛むと痛いよ」「嫌だったんだね」と気持ちを受け止めながら伝え、言葉で表現できた時にはたくさん褒めてあげることが大切です。

Q. 1歳の噛みつきはよくあることですか?

はい。1歳はまだ言葉で気持ちを十分に伝えられない時期のため、噛むことで気持ちを表現してしまうことがあります。発達の過程で見られることは珍しくありません。

Q. 家で噛んだ時は叱った方がいいですか?

強く叱るよりも、「噛むと痛いよ」と短く伝え、噛みたかった気持ちを受け止めることが大切です。長い説教よりも、繰り返し優しく伝える方が子どもには伝わりやすいでしょう。

Q. 保育園で噛んでしまいました。家庭ではどうすればいいですか?

まずは保育園の先生と情報を共有しましょう。家庭でも、噛まずに気持ちを伝えられた時にはたくさん認めてあげることで、少しずつ言葉で表現する力が育っていきます。

Q. いつ頃には噛まなくなりますか?

個人差はありますが、多くのお子さんは言葉が増え、自分の気持ちを伝えられるようになる2歳頃から少しずつ落ち着いていきます。

まとめ

  • 1歳の噛みつきは発達の過程でよく見られる行動の一つ
  • 言葉で気持ちを伝えられないことが大きな理由
  • 家庭でのスキンシップが影響することもある
  • 眠さや疲れ、生活リズムの乱れで噛みつきやすくなることもある
  • 言葉の発達とともに、多くの子どもは自然と落ち着いていく

噛みつきは「困った行動」ではありますが、「困っている」という子どもからのサインでもあります。

保育士として19年間、多くの1歳児と関わってきましたが、子どもたちは成長とともに少しずつ気持ちを言葉で伝えられるようになり、噛みつきも減っていく姿をたくさん見てきました。

焦って叱るのではなく、「どうして噛んだのかな?」と子どもの気持ちに寄り添いながら、一緒に成長を見守っていきましょう。

参考資料

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